二十世紀梨の歴史

 二十世紀梨は、明治21年千葉県松戸市で松戸覚之助という当時13歳の少年によって偶然発見されました。それは、ごみ置き場のまわりに生えていたそうです。この頃、梨といえば果皮が茶色の赤梨であったのに対し、「色は淡緑色で肉質がやわらかく、水分が多くて口の中にいれると自然にとけるような美味しい梨」として注目を集めました。その後、「二十世紀になったら梨の王様になるだろう」と期待して二十世紀梨と名づけられ、まさしくそうなったのです。

 鳥取県には明治37年、鳥取市桂見の北脇永治という人がその苗木を10本購入したのがはじまりです。その後、急斜面でも栽培できるということで昭和8年頃から急速に栽培面積がふえてきました。今では全国一の産地となり鳥取県を代表する果物となりました。

二十世紀梨の花

 一見桜にも似た二十世紀梨の花。4月上~中旬には一斉に満開となります。一つの花芽には8~10個の花が咲きます。二十世紀の花は「鳥取県の花」にもなっています。

二十世紀梨の人工受粉

 二十世紀梨は、ほとんど自然交配をしません。そのため、あらかじめ準備しておいた他の品種の花粉を、花ひとつひとつに丁寧につけます。筆や耳かき棒のようなもので家族総出でつけていきますます。

 人工交配する花粉は二十世紀梨の花粉ではありません。普通は「長十郎」や「新興」などの違う品種の花粉を使います。なぜなら、二十世紀梨の花粉では実がつかないからです。(他家受粉といいます)

 花粉をとるにはまず花芽のついた枝切り、ビニールハウスなど暖かいところに入れて早く花を咲かせ、花をとります。とれた花の花粉を目の細いふるいでとり、乾燥してできあがりです。最近は、花粉をとる機械も普及し、昔に比べ随分楽になりました。

 交配は、とにかく時間との闘いです。一斉に花が咲くため、受粉に適した日にちと時間をのがさないように人工受粉します。

摘果

 実がビー玉くらいの大きさのとき、1つの軸に3~5個くらい実がつきます。その中でよりすぐれた1つの果実だけ残して後は摘果します。

小袋かけ

 摘果が終わると次は小袋かけをします。すべての果実ひとつひとつ丁寧に袋をかけます。だいたい、1時間に300袋くらいかけます。すべての実に袋をかけるので、かけた袋の数を後で数えれば、いくつ実がついているのわかります。

 小袋は全農とっとりの果実袋工場で製造され、特許を取得しています。

大袋かけ

 実がピンポン玉より大きくなったとき大袋をかけます。このときすでに、最初にかけた小袋ははじける寸前です。小袋、大袋と2回も袋をかけるので、すべすべの肌のように美しい二十世紀梨ができるのです。また、この袋かけがしてあるため病害虫や農薬が直接つかず、アメリカ、オーストラリアなど世界各国へ輸出できるのです。

収穫

 たわわに稔った二十世紀梨の重さで、果樹園の棚はいちだんと低くなっています。 梨をとる時はすこしコツがあります。むやみに下にひっぱてもなかなか採れません。枝ごと折れてしまう事もあります。ところが上向きに持ち上げるようにねじると驚くほど簡単にとれます。

とてもデリケートな肌なので、ひとつひとつ気を付けながら丁寧に収穫します。

選果

 収穫された二十世紀梨は、袋がついたまま選果場へ持ちこまれます。選果場で袋をはぎ、重さ・色・形・糖度を検査されそれぞれの等級・規格別 に選別・箱詰めされます。 最新鋭の選果場では、光センサーで形はもちろんのこと、糖度や熟度まで瞬時に判断し、選別 します。箱詰もロボットが活躍しています。

進物用宅配

 進物用はその中でも選りすぐりのものを皆さんのご家庭までお届けします。

海外輸出

 鳥取県の二十世紀梨は東南アジア(台湾、香港)をはじめ、アメリカ合衆国に輸出されています。

 昭和8年に約44トンが初めて輸出されて以来、幾多の困難を乗り越え継続されていますが、1993年には、アメリカ本土輸出10周年、ハワイ輸出25周年の記念式典が現地で開催され、特にハワイではホノルル市長から11月を「鳥取二十世紀梨の月」とする宣言を受けるなど、国際親善にも一役買っています。

 輸出される二十世紀梨は、検疫の関係上、それぞれの国ごとに栽培される果樹園が決められています。各国より検査官が来日し、生育段階から厳しい検査が行われます。その検査を無事通 過した二十世紀梨だけが輸出されるのです。

梨の種類

  • なつひめ(新品種)

    鳥取県園芸試験場で育成され平成19年3月に登録された青梨です。高糖度の赤梨「筑水」に「おさ二十世紀」をかけあわせて育成されました。二十世紀梨より収穫がやや早く、糖度が高いことが特徴です。鳥取梨の甘えん坊「なつひめ」の透きとおる甘さをご賞味ください。

  • 新甘泉(新品種)

    鳥取県園芸試験場で育成され平成20年2月に登録された赤梨です。高糖度の赤梨「筑水」に「おさ二十世紀」をかけあわせて育成されました。「幸水」と「豊水」の中間時期に収穫でき、さらに糖度が高くほとばしるような甘さが特徴です。体にしみわたる「新甘泉」の魅力的な甘さを体験してみてください。

  • ハウス二十世紀梨

    文字通り二十世紀梨のハウス栽培です。露地栽培にくらべて約10日早い8月中旬頃から出荷されます。

  • 幸 水

    形が美しく、上品でさわやかな甘さをもつ赤梨の代表品種です。8月中旬頃から出荷されます。

  • 豊 水

    幸水につづく赤梨の代表品種で、大玉で甘味酸味が適度にありたいへん濃厚な味です。9月上旬頃から出荷されます。

  • 新 興

    晩生梨で甘味と酸味のバランスの良さが特徴の大玉品種です。10月上旬~下旬頃にかけて出荷されます。保存性のよい品種なので、台湾では急速に消費が伸びています。

  • あたご梨

    冬の赤梨の代表品種で1玉1kg以上にもなるジャンボ梨です。果肉は柔らかく、とろけるような甘さと独特な香りが人気の高級果実です。11月上旬から年末頃にかけて出荷されるため、お歳暮などの贈答用として人気の品種です。暖房のきいたお部屋で食べる純白な梨の味は格別です。

  • 新 雪

    赤梨のジャンボ梨の代表品種で、重さは約1.5kgと子どもの頭くらいの大きさにもなる珍しい梨です。シャリシャリとした歯ごたえとさっぱりとした味が特徴で、11月下旬頃より出荷されますが、とても日保ちがよいので翌年2~3月頃まで出荷されます。鳥取の梨販売の最後をしめくくる品種です。

  • 秋 栄

    鳥取大学が平成9年に登録した赤梨の新品種です。8月下旬頃から出荷され、ショ糖を多く含む上質な甘さは一度食べると虜になるでしょう。熟度が進むと果肉が水浸状となるものもありますが、問題なく美味しく頂けます。

  • 王 秋

    平成15年に登録された赤梨の最新品種です。10月下旬頃から出荷される晩生梨で、たて長の形が特徴的です。甘さはもちろんのこと、今までの晩生梨にはないザブザブとした瑞々しい食感を楽しめます。お歳暮などの贈答用として人気上昇中です。

知ってますか?梨のおいしいところ

 通常、軸が細くて、肩と尻が張った梨においしい梨が多いようです。また、梨の一番おいしいところはお尻の部分で、芯に近いところほど酸味が強くなります。

梨の効果

 梨は水分が89%と多く、また解熱作用があります。風邪で熱がでているときなどに食べると熱を下げ、咳を鎮め、乾いたのどを潤してくれるので最適です。(梨のど飴があるくらいです。)

 梨にたくさん含まれる「カリウム」は、塩分のとりすぎによって増えた体内の「ナトリウム」を減らして、血圧を安定させる働きがあります。血圧が高いのを気にしている方におすすめです。

 また、特有のシャリシャリした歯ごたえは「ペントザン」「リグニン」という成分からできた石細胞によるものです。石細胞は腸を刺激し便秘を予防してくれます。

木乃実神社

二十世紀梨の原木が御神体の神社

 鳥取市湖山町東五丁目にある木乃実神社は、二十世紀梨の原木が御神体としてお祀りしてある全国でも珍しい神社です。

 この神社の沿革は、昭和15年に鳥取県果物同業組合が県内の梨生産者より浄財を募って計画し、昭和16年6月25日に当時の鳥取県農業試験場津ノ井園芸試験地内に造営されたものです。 以来、毎年この日を例祭日として果実の豊穰祈願祭が行われ、さらに昭和59年11月からは秋の収穫感謝祭が加わり、年2回の例祭が定着、今日に至っています。

 現在の地に遷座されたのは昭和48年のことで、鳥取県果実会館の建設に際し、木乃実神社造営奉賛会が組織され、当地に新築・移転されたものです。同時に宗教法人「木乃実神社」が設立され、現在はJA全農とっとりが管理しています。 二十世紀梨を基盤として発展した鳥取県の果樹産業は、本県を代表する基幹産業にまで成長しましたが、木乃実神社はこれからも幾多の困難を克服し、心血を注いだ先人の苦労に感謝し、豊かな実りを祈願する生産者の心のよりどころとして守られていくことでしょう。

 ある年、祭礼に酒をだすことをやめた年がありますが、その年の梨は大不作となりました。そのため、翌年からは以前と同じようにお酒を振る舞うようにしたら豊作に恵まれたということがあります。

 ちなみに果物が「神」になったのは、「二十世紀梨」と「桃」、「橘」の三つです。

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